「るつぼ」@新国立劇場 under blue sky
2012年 11月 15日
こんな雲ひとつない青空の下、早起きして新国立劇場へ。
Twitterでのあまりの「るつぼ」よかった!つぶやきに押されて。
Z席発売の10時より20分前に着いたのにすでにすごい列。7:30から劇場内に入れるなんて知らなかった。
で、その列は「るつぼ」と「トスカ」も一緒でちょっと混乱した。
ま、結果A席しか残ってなかったけどイマドキのお高いチケットではなかったので助かった。
上演時間3時間45分。次の用事にもギリギリ。
良かった。
観るほうも体力知力がいたけど劇場全体の空気が張り詰めていた。
「17世紀末にマサチューセッツ州セイラムで実際にあった“魔女狩り事件”を基にした」アーサー・ミラーの戯曲がこんなに今の日本にはまるとは思わなかった。
俳優ひとりひとりが自分の言葉としてしゃべっているのが、そこで生きる人間として居るのがすごい。
演劇の力と全員の力量を感じました。
とにかく台詞量が多いのですが、緊張が途切れない。
初めからすんなり入ってきて驚くくらい。
前半は見ながら今の世の中の状況のさまざまなことが頭をよぎりました。
それはだれかがだれかを指させばあっと言う間に標的にされる恐怖とか
途中で過ちに気付いても保身のためにもはやただせないとか
原発作っちゃってまずいことになったとわかっても止められないとか
まわりから云いつのられたら一体どっちが正しいのかわからなくなったりとか
そもそも正しいって何とか。
もちろん宗教的な問題が大きいのですが
アーサー・ミラーも「ハリウッドで50年代に起きた反共産主義ヒステリーに反抗して」この作品を書いたのだとか。
後半からラストにかけての息詰まる台詞の応酬。
一瞬一瞬の感情の揺れと変化が
ひとりひとりの俳優の中で消化されているのがほんとにすごい。
演劇の力を感じました。
「るつぼ」のストーリーに既視感を感じていましたが思い出しました。ウィノナ・ライダー出演の「クルーシブル」でしたね。あれはアーサー・ミラーの戯曲の映画化だったんだ。
ずいぶん前に見たのですが、映画はあまり後味が良くなかった印象があります。
今回の舞台はこなれていて「いま」を感じさせてくれました。
ほんとに役者さんたちみなさんよかったです。
栗田桃子さんは文学座の公演で何度か拝見しているのですが、今回も際立って台詞が聞き取りやすいんです。気負うでなく繊細で強い。うまく言えないのですが今回もじんわりとすごい女優さんだなぁと思いました。
役のどれにかかわらず全員よかったです。
みんな「その人」でした。
出演:池内博之 鈴木 杏 田中利花 関 時男 木村靖司 檀 臣幸 浅野雅博 松熊つる松 栗田桃子 佐川和正 亀田佳明 深谷美歩 武田 桂 日沼さくら チョウ・ヨンホ 梨里杏 奥泉まきは 磯部 勉 戸井田稔 佐々木愛