『シェイクスピアの森通信』観劇日記
2017年 10月 16日
「シェイクスピアの森Tokyo」の主宰・関場理一先生が週刊で発行されている
メルマガ「シェイクスピアの森通信」 (2017/10/16)に
『ウィンザーの陽気な女房たち』の観劇日記が掲載されました。
ご許可をいただいて転載します。
関場先生、ありがとうございます。
《今週のフォーカス》
∥森番の観劇日記から:
The Merry Wives of Windsor/『ウインザーの陽気な女房たち』を観劇/聴劇する∥
10年でシェイクスピア全戯曲完遂という壮大な夢の実現へ向けて、
今年の1月8日に第1回公演を行なったシェイクスピア劇のレクチャーと日英語朗読劇シリーズ。
前回(第3回)のThe Merchant of Venice/『ヴェニスの商人』 (8月20日、神奈川近代文学館ホール)
からほど2ケ月が過ぎ、第4弾に選ばれたのはシェイクスピア唯一の同時代市民喜劇の
The Merry Wives of Windsor/『ウインザーの陽気な女房たち』です。
お招きをいただき、観劇/聴劇した森番が今朝ほどTwitterに感想の一端を書き込みました。
それを観劇日記として収録させていただきます。
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● シェイクスピア劇のレクチャーと日英語朗読劇シリーズ第4回
The Merry Wives of Windsor/『ウインザーの陽気な女房たち」
(講師・演出/瀬沼達也)
――― Twitterへの書き込み〔2017/10/16]より
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きのうの午後は横浜市の港の見える丘公園にある神奈川近代文学館に足を運び、
中会議室でシェイクスピア劇のレクチャーと日英語朗読劇シリーズ第4回
The Merry Wives of Windsor/『ウインザーの陽気な女房たち」(講師・演出/瀬沼達也)
を観/聴劇し贅沢な時間を過ごした。
10年でシェイクスピア全戯曲の上演を完遂するという壮大な夢の実現へ向けて
第4弾に選ばれたのはシェイクスピア唯一の同時代市民喜劇の『ウインザーの陽気な女房たち』。
直前レクチャーの講師で朗読劇に出演し演出まで統括する
座長の瀬沼達也さんの風貌は回を追うごと沙翁に近づいてきている。
登場人物の多くない喜劇だが、総勢で20人はいる。それを8人で演じる。
フォルスタッフ(増留俊樹)とフォード夫人(飯田綾乃)と
ページ夫人(阪口美由紀、客演)を除けば3役も4役も兼ねる。
さらに、シェイクスピア時代の市民劇の反映だが、
ラテン語や仏語も飛び出し英語には訛りが加わる。
そうした言語上の難しさを克服するためにも
台本では日本語の比率が多くなったと直前レクチャーで説明された。
シェイクスピアの原文(ペンギン版)の総行数は2699だが、
80分という時間の制約から1,497行をカット。
確認の意味で携えたArden-3版のページを繰りながら聴いた。
台本を持ちながら可能なアクションで動く立ち稽古的な朗読劇のスタイルは変わらない。
息の合った見事なアンサンブルに聴き入る。
学生時代にフォルスタッフを演じた瀬沼達也は何度か太っちょの老騎士を演じた後輩に譲り、
フォードを演じて嫉妬と怒りをぶちまけ、ほかにキーズ医師やニムも演じた。
シェイクスピアが書きたかったのは女性たちの活躍だと考えると、
この市民喜劇をエリザベス女王の所望で書いた伝説を信じたくなる。
レクチャーで瀬沼さんはそう述べた。
朗読劇でのフォード夫人(小嶋しのぶ)、ページ夫人(阪口美由紀)、
クイックリー(杉山由起、遠藤玲奈)らの活躍は清々しい。
そう考えると、この市民喜劇の日本語訳のタイトルも気になってくる。
坪内逍遙訳を踏襲してきたタイトルだが、
シェイクスピアが使ったmerryには快活さと愉快さがあるように思う。
「女房」も限定的にしか使われなくなった。
だとすれば、『ウインザーの愉快な妻たち』がふさわしいのかも。
なお台本の原文はPenguin Classics版、
日本語は松岡和子訳(ちくま文庫版、シェイクスピア全集9)を使用。
シェイクスピアを愛する愉快な仲間たちの会と横浜山手読書会が共催するこのシリーズ。
次回は2018年1月7日に神奈川近代文学館で、演目は『ロミオとジュリエット』。
2017年10月15日14:00~16:00、神奈川近代文学館 中会議室
共催:シェイクスピアを愛する愉快な仲間たちの会(SAYNK)+横浜山手読書会
協力:The Yokohama Shakespeare Group (YSG)