転がる香港に苔は生えない
2010年 12月 05日
香港返還前後に実際に香港で暮らし、そこでの暮らしや出会った人々との関わりや会話を克明に記録しつつ作者の感じたままを率直に述べている。
その長さにちょっとためらい、実は何度か休み休み読み終えました。
作者が出会った人々の克明な描写になぜか時々息苦しくなってしまった。実際に安アパートを借りて2年間暮らした体験記なので香港の置かれた複雑な立場やそこで暮らす人々の生身の姿や考え方がよくわかる。作者のひとりひとりとの関わり方が濃くて、それは通りすがりの人に対しても同様で、その人間へのあくなき興味に私は興味を覚えました。もちろん本を書くという目的があったればこそでしょうが、出会いのたいせつさやそれをまた育てていこうという作者の姿勢も興味深いことでした。
自分にはここに住むことは出来ないなぁ。というのが正直な感想。作者自身もそこは仮の宿だからこそ、と言っている。そりゃあそうだよねぇ。香港や大陸のひとたちのたくましさに対抗(別に対抗しなくていいけど)できる日本人は多くはないでしょう。
それでも、やっぱりまたぞろ香港に行きたくなりました。そのたくましさや返還後の香港をちょっとのぞきに。
わたしが香港を初めて訪れたのは1976年、学生の時でした。それは私にとって初めての海外旅行でいくつかの大学の合同の日豪親善交換ツアーのようなものでした。
名前の通りオーストラリアがメインでしたがニュージーランドも訪問し、各都市でその地の学生との交流会などもあって有意義な旅でした。日本人以外と日本語以外で交流することに開放感を感じたことを覚えています。
で、1カ月以上の旅の最後の訪問地がなぜか香港だったんです。滞在したのは多分3,4日だったと思うのですが。飛行機を降りるなり襲ってきた熱風に吹かれ、街中のケバケバシサと喧騒と交通渋滞に呆然としていました。今では記憶もあいまいなのですが。
2回目は返還直前の1997年ごろ。この時も短い観光旅行でしたが、ずいぶんと垢ぬけた街や人々の様子と開発途中で工事中が多かった印象とやっぱりケバケバしいのですが、なんとなくウキウキするような、不思議なマチでした。
また、ちょこっと行ってみたい場所ではあります。
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