「シェイクスピアの森通信」:劇団子供鉅人「夏の夜の夢」に出演して

「シェイクスピアを楽しむ会」のチューター、関場先生が毎週発行なさっているメルマガ「シェイクスピの森通信」に、先月出演した100人シェイクスピア劇団子供鉅人特別公演「夏の夜の夢」について書いたものを2回に分けて掲載していただきました。



パルテノン多摩×劇団子供鉅人

特別公演 100人シェイクスピア「夏の夜の夢」(2018915日・16日)に出演して

                          

(1)劇団子供鉅人・100人シェイクスピアとの出会い

劇団子供鉅人との出会いは2017年の「『マクベス』出演者100人募集!」の情報をインターネット上で見かけたことでした。

シェイクスピアの中でも『マクベス』は好きな作品のひとつです。関西出身の劇団で、兄弟が中心、劇場はあの「本多劇場」、しかも「100人でシェイクスピア!」のノリとキャッチコピー、パンクなビジュアルが気になって、その劇団について検索したり、ネット上で動画を見たりしました。その時の印象は「若くて元気でエネルギーのある劇団」でした。主宰・演出の益山貴司さんのインタビューは面白く、動画の中の劇団員たちは元気いっぱいでした。そしてさらに興味を深めたのは、マクベスを女優が、マクベス夫人を男優が演じるという逆転のキャスティングと公開されていたそのビジュアルでした。

「なんだかよくわからないけど、おもしろそう」というのが私の行動の基準なので、さっそく応募しました。劇場が下北沢「本多劇場」というのも魅力でしたし、100人で「マクベス」しかも男女逆転のキャスティンでどう創るのかしらと興味津々でした。

稽古初日に演出の貴司さんにごあいさつすると、「『一万人のゴールドシアター』見ましたで。」と言ってくれて一気に親近感がわきました。

配られた台本は拍子抜けするくらい原作に忠実で、これは真正面からシェイクスピアと取り組むのだなと感じました。劇団員、スタッフ、100人のアンサンブル出演者の顔合わせも和やかで、貴司さんのあっという間に100人の心をつかむ話術とお人柄に感心しました。

100人で台本を読みながら、各シーンの配役がどんどん決まっていき、その各シーンが常にオーディション形式でした。各役を希望する人たちの間で台詞を言ってその場でキャスティングされます。後から変更になる場合もあります。これは今回の「夏の夜の夢」でも同様でした。

私は少し(?)年長でしたので、幸運にも原作にはない「ダンカンの妻たち」の一人にキャスティングされ、ダンカン役の貴司さんのおそばにはべるという役どころでした。

本番2週間前に自分の不注意から自宅で足の小指を骨折し、本番中もギプスをつけたまま本多劇場の花道を歩く有様でしたが、迷惑がられたり降板されたりするどころか、共演者やスタッフからも気にかけていただき本当にありがたかったです。

子供鉅人の「マクベス」は現代の難民問題、世界情勢、情報社会等々を視野に入れつつ、マクベス夫妻を軸として、彼らを翻弄する100人の群衆、大衆の力が強く出る演出でした。衣装の色がその時々のパワーを表してダンカンの時代には白、マクベスが力を持つと赤、ラスト近くにマルカムがマクベスを倒すシーンで100人の衣装が途中から赤から緑に変わります。

観客は若い世代が多かったですが、「こんなにわかりやすくておもしろい『マクベス』は初めて」という声が多く、シェイクスピアに親しみを持つ人が増えたのはうれしいことでした。

昨年の『マクベス』の話が長くなってしまいましたが、劇団子供鉅人の芝居創りの一端をお伝えしたかったので。

ブログ「演劇生活しちゃってます。Miyuki’s Blog」に画像があります。

https://misakichi4.exblog.jp/26650530/

このマクベス出演を通じてすっかり劇団子供鉅人のファンになり、その後いくつかの劇団公演を観劇したり、劇団員のワークショップなどに参加しましたが、どの公演も全力投球、なにより好感が持てるのは人間に対するあたたかい視点とユーモアセンスです。それは100人シェイクスピアにもいかんなく現れていて、100人を塊としてではなく一人ひとりとして尊重していることがだれにもはっきりわかるので、全員がすぐに作品創りに一生懸命に関わろうとするのだと思います。その人間ひとりひとりに対するあたたかい視点はシェイクスピアにも通じるものがあると私は感じます。

(2)『夏の夜の夢』@パルテノン多摩きらめきの池

さて、100人シェイクスピア第2弾がまたまた私の好きな「夏の夜の夢」、しかも野外劇、さらに池の中!・・・池の中ぁ?!募集内容にもはっきりと「水の中で演技」と書いてあります。ううむ、野外劇というだけでもハードルが高いのに、さらに水の中とは。ここですでにハードな芝居になることは予想できましたが、「面白そう」の魅力には勝てず応募しました。

稽古初日はエジンバラ・フリンジ公演とフィンドホーンを巡るスコットランド・ツアーから帰国した翌日で、出発前は自分でも参加は無理かと半分思っていましたが、幸い元気だったので参加しました。

振付の長谷川さんは開口一番こう言いました。「みなさん、よく考えたほうがいいですよ。水の中というのはエネルギーをとられます。やめるなら今のうちです。経験から言います。」

100人集まってみたら、ほとんどが2030代で、50代以上は5人、そのうち2人が私たち夫婦でした。今回は夫婦そろっての共演で、夫も少ない男性陣の中で活躍していました。

初日から100人が狭い空間を走り回るハードなウォーミングアップ、続いて情宣用の動画撮影で池の中へ。正直、確かにこれはよく考えたほうが良さそうだと頭の隅で思いました。演出の貴司さんはじめ劇団員、スタッフから「みなさん、くれぐれも無理しないように。今日は無理に入らなくていいですから。」との声かけに甘えてこの日は池の中には入りませんでした。「とにかく無理しないで。けがしないで。風邪ひかないでください。」の声かけは本番まで毎回ありました。

この時私は「うん。今回は無理なくけがなく風邪ひかず、できることをして楽しもう。」と内心で決めました。

私は昨年2017年から今年にかけて、さいたまスーパーアリーナでの「一万人のゴールド・シアター~『ロミオとジュリエット』」、100人シェイクスピア『マクベス』、『夏の夜の夢』と多人数でのシェイクスピア作品に出演する機会を得ました。『ロミオとジュリエット』は1700人の60歳以上の出演者で、大半が70代以上。私は若いほう、というより人生の大先輩たちの前では「まだまだ小娘」と思わされました。

今回の『夏の夜の夢』では女性最年長です。演劇やダンスにエネルギーを燃やす若い世代のみなさんとひとつの作品に関わるという貴重な機会でした。

こうした幅広い年代の方々と芝居創りの現場に居ることで、演劇だけでなく、人生そのもの、生き方そのものに対しても得ること考えることが多くありました。

ある演目に出演するときには自分がどの役にキャスティングされるか、台詞がどれくらいあるか、出演シーンはどれくらいあるか、目立つシーンはあるか、などが気になるものです。もちろん人間ですから自己顕示欲や承認欲求、向上欲があり、それは悪いことではないと思っていますが、これら多人数の舞台への出演を通して「自分はどうでもいい」と実感できたのは嬉しいことでした。それは否定的な意味でも自己卑下でも投げやりでもなく、自分ひとりがどうか、などというささいなことは問題ではなく、作品全体が良くなることを願い、そのためにひとりひとりが一生懸命になるという意味です。そしてそれは作品が良いものになると信じることができた時にはそこに参加していること自体が喜びになります。       

自分が出演しているシーンはもちろん好きですが、自分が出ていないシーンの稽古を見ているのも楽しかったですし、残念ながらあまり多くはなかった劇団員稽古を見る機会の時もわくわくしました。劇団子供鉅人の役者はひとりひとり個性が強くそれぞれに魅力的で、なにより発するエネルギーがものすごい。それでいて稽古中はアンサンブルメンバーにも気さくに声をかけてくれるので、稽古場の雰囲気はいつもとても和やかでした。

全体稽古ではもっぱら100人の出演シーンの稽古が多くなりますので、劇団員のシーンを含めた芝居の全容を知ることができたのは公演直前なのですが、客席で見たいものだと思ってしまいました。

実際に池の中での稽古が始まったのは9月に入ってからで、その頃には気温が低い時や雨の時もあり、野外での待機場所は森の中なので蚊や蜘蛛や虫や小枝にも悩まされました。池の中は藻が繁殖していて滑りやすく、水にぬれた衣装は冷たく重くなり、文字通り「無理なくけがなく風邪を引かない」体調管理・体力調整が必要でした。直前には台風が接近したり小雨が降ったりと公演の催行が心配されましたが、なんとか上演できました。全員が元気に参加できて二日間とも雨があがったのはあらゆるバランスと人知の及ばない力の助けもあってこそのことでした。公演翌日にはゲリラ豪雨などもあり、1日ずれていたらとヒヤリとしました。

公演前々日に客席が組まれたのを見て、野外で夕刻2時間の観劇をするのは観る側にもかなりのエネルギーを強いることになると改めて感じて少し心配しました。

公演当日には「シェイクスピアを楽しむ会・町田」から4名のメンバーが来てくれました。観劇後のていねいなご感想を拝読して本当にうれしくありがたく感じました。

終幕後のSNSのタイムラインには劇団員やスタッフをはじめ、出演した100人の「ありがとう」「お疲れさま」「楽しかった」「寂しい」があふれていました。出演者だけでなくスタッフもパルテノン多摩の関係者もみんなが笑顔で楽しんだ公演でした。

劇場公演では起こりえない数々の困難がありましたが、そのひとつひとつの難問さえ今回はみんなが楽しんだように思えます。

きらめきの池の水の冷たさや、ぬるりとした池の底の感覚や、すべらないようにふんばった一歩一歩や、舞台袖ならぬ森の中で寒さをこらえながら出番を待ち、共演者と笑顔を交わしたそのひとつひとつ、一瞬一瞬がかけがえのない宝物のような時間でした。

「奇跡」なんて簡単に使う言葉ではありませんが、今回ばかりはありとあらゆるバランスが幸運をもたらした「奇跡」のような公演だったと思わずにはいられません。

 上演中のお客様の笑い声、客席も巻き込んでの演出にためらうことなく参加して一緒に楽しんでいただけたこと、終幕後の笑顔がなによりのご褒美でした。

 この公演に関わることができて本当に幸せでした。現代に通じる素晴らしい戯曲を残してくれたシェイクスピアにはもちろん大感謝です。




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by sk_miyuki | 2018-10-09 01:27 | Shakespeare | Trackback | Comments(0)

50歳から演劇生活中の阪口美由紀のブログ。稽古・公演・映像・観劇メモや日々のあれこれ。2018年から「仮想定規」メンバー。2018年エジンバラフリンジに参加しました。Member of KASO JOGI. Perform at 2018 Edinburgh Festival Fringe.


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